2022年4月より2か月に一回のペースで茨城新聞論壇への記事を書くことになりました。
今回はその第6回目になります。
内容をブログに掲載しますので、ご一読ください。
『茨城論壇』2023/3/11 茨城新聞掲載
『自分見つめ出会い感謝』
厳しかった寒さが少しずつ緩み始め、春の足音が聞こえてくる季節になった。気付いたらもう3月だ。いつの間にか本年度も終わってしまう。毎年のことだが月日の過ぎる早さに驚いてしまう。
この1年、私にとってもさまざまな出来事があった。この連載もその一つだ。4月から始まり、毎回悩みながらも何とか原稿を仕上げることができている。自分の考えを言葉としてまとめるという作業は、仕事柄、慣れていると思い込んでいた。しかし、いざ原稿として書き始めると、大学の授業や論文とは勝手が違い、ずいぶん戸惑ったことを思い出す。今でも決して慣れてはいないが、それでも1年間継続してみると、その時々での自分の考えを立ち止まって見つめ直す素晴らしい機会を頂いたと感じている。
プライベートでは、コロナ過でしばらく実現できなかった親との旅行も今年は実現できた。私の親も決して若くはない。この後何回一緒に旅行に行けるのだろうと思いながらも、この年になっても素直に親に接することができない自分を苦々しく思いながら過ごした道中が思い出される。こうして振り返ってみると、私個人としても1年間で本当にさまざまな出来事があったのだと感じる。楽しかったこと、悲しかったこと、うれしかったこと、しんどかったこと。いずれも今の私の一部となっている大切な時間だったのだと思う。
一方世界に目を向けてみると、長期化するウクライナ侵攻を始めとした混沌が、世界の人々の日常をむしばむ状況へと至ってしまった。日本でも元首相が凶弾に倒れるという、信じられないような事態が起こり、その後の政治的混乱へとつながったことは記憶に新しい。
これら以外にも、この1年で私たちを取り巻く社会では数えきれないほどの出来事が起こった。それらを思い起こしていると、私たちはまるで海壺にいるかのような激動の時代の中に生きていることをあらためて認識させられる。ときに自分の人生が、よそ見をしているとあっという間に時代のうねりに流されてしまうような感覚すら覚えてしまう。
「VUCA」という言葉がある。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性という四つの言葉の英語の頭文字を集めた言葉だ。確実な未来が見通せず、将来の予測がますます難しくなっているという現代社会を表現する言葉として近年よく用いられている。この言葉が示すように、混沌とする今の時代を生きる困難さは私たちの多くに共通する課題でもあるようだ。では、そのような時代の中で私たちはどうすれば「自分」を見失わずにいられるのだろうか。どうすれば時代に流されることなく。「自分」を見つけることができるのだろうか。そんなことを考えていると、私は「自分」に目を向けることの大切さをあらためて感じてしまう。
時間はあっという間に過ぎる。世界のうねりは私たちの日常の中にいつの間にか深く入り込み、その影響力を行使している。日々の忙しさの中では、出会った人の顔を思い起こすこともできない。それではとても「自分」に目を向けることはできないだろう。
自分が何を感じ、何を大切にしたのか、そしてどう変わったのか。そうした「自分」の体験や言葉を振り返ることで、それら一つ一つが積み重なり、「自分」が少しずつ形作られていくはずだ。
この時期は人との別れも増える。立ち止まることを恐れずに「自分」に目を向けるとともに、出会った人々を思い起こし、その出会いに感謝することも忘れたくない。それができたら、また次の一歩を踏み出すことにしよう。
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